World AIDS Day


aidsUNICEF(国連児童基金)は11月27日公表した報告書で、エイズに伴う疾病による若者の死者数が過去15年間で3倍に増加したと明らかにしました。

【HIV/AIDSの現状】
HIV/AIDSの現状をご存知でしょうか。

WHOの発表によると、2015年3月の時点で全世界の3690万人がHIVと共に生きています。そのうちの1500万人が抗HIV治療を受けていて、前年より200万人が増加しました。15~19歳の感染者は200万人で、成人も小児もHIV陽性で抗HIV治療を治療中の患者は5年前より約2割増えています。HIV陽性妊婦の73%が母子感染を防ぐために抗HIV治療と向き合ったため、新規の垂直感染は2010年より58%減少しています。感染や予防への意識向上が実を結び、新規の感染者数は少しずつ減少しています。

それでも、1年間で120万人がAIDSに関連する原因で命を落としているです。亡くなった若者の多くは自分のHIV感染を知らずに子供時代を過ごし、15歳未満の感染者のうち治療を受けているのは3分の1に留まるといわれています。

一方わが国では2014年1年間における新規HIV感染者報告数は1091件(過去3位)、感染に気づかぬままAIDSを発症して報告された新規AIDS患者報告数は455件(過去4位)、合計は1546件(過去3位)で、前年の1590件からわずかに減少したものの累計報告数は24000件を超えています。20歳代の新規HIV感染者報告数が349件で過去最多となったことや全体に占める新規AIDS患者の割合が約3割であることからも、まだ依然として予断を許さない状況であることに変わりはありません。

【新たな目標】
2015年9月25日の「持続可能な開発サミット」で、国連加盟国は「持続可能な開発のための2030アジェンダ」を採択しました。その中には一連の持続可能な開発目標(SDGs)、通称「グローバル・ゴールズ」が含まれていて、その一部として2030年までにAIDSの蔓延を終わらせるため、資金援助・献身・革新を急ぐ必要があると宣言されました。

今、世界規模の目標はHIVの拡散を食い止める段階にあります。WHOは目標の実現に向けて着手し始めると提言しました。例えば患者のニーズに完全に対応できるよう治療をカスタマイズしたり更に薬効範囲を広げて予防したり、といった具体的な抗HIV治療法も考えられていて、既に効果として低所得国12カ国でHIV感染者の60%以上がその感染を認識し抗HIV治療を受けるようになりました。
この報告を受け、国連加盟国はAIDSを終わらせるという新たな目標は実現可能だとしています。UNAIDS(国際連合エイズ合同企画)も、AIDSの終わりは近いと確信しています。

【レッドリボン】
UNAIDSのシンボルマークにも採用されているレッドリボンは、薬物乱用防止とAIDSに対する戦いのシンボルで、HIV/AIDSと共に生きる人々が1つになる象徴でもあります。また彼らに対し、偏見や差別を持たず、理解し支援するための世界的な社会運動をも象徴しています。

元々はヨーロッパに古くから伝わる風習で、病気や事故によって人生を全うできなかった人への追悼の気持ちを表すものでした。レッドリボンがAIDSのために使われ始めたのは、アメリカでAIDSが社会的な問題となってきた1980年代の終わりごろ。この頃、演劇や音楽などで活動していたニューヨークのアーティストたちの間にもAIDSで命を落とす人々が増えてきました。そうした仲間たちに対する追悼やAIDSに苦しむ人々への理解と支援の意志を示すため、レッドリボンをシンボルにした運動が始まりました。初め、その目的はHIVについてみんなで話し合うことでした。当時HIVは虐げられ感染者は扉の閉ざされた部屋で生活を強いられました。時には、愛する人にさえ感染を伝えられなかったほど。赤は力強く目を惹く色、そして情熱・心・愛の色でもあります。レッドリボンは、AIDSに対して偏見を持っていない、AIDSと共に生きる人々を差別しないというメッセージなのです。後にこのレッドリボン運動は、その考えに共感した人々によって国境を越えた世界的な運動になっていきます。

レッドリボンはHIV/AIDSの社会認識を高める強い力であり続けています。

【世界エイズデー】
12月1日は世界エイズデーです。

世界レベルでAIDSの蔓延防止と患者・感染者に対する差別・偏見の解消を目的に、WHOによって1988年に制定されてから毎年12月1日を中心に世界各国でエイズに関する啓発活動が行われています。日本でもその趣旨に賛同し、AIDSに関する正しい知識等について啓発活動を推進しています。

今年の日本のテーマは、AIDS IS NOT OVER だから、ここから

治療法の進歩により、HIV陽性者が長く生きていくことが期待できるようになってきています。これは、社会で多くのHIV陽性者が働き、学び、生活していることでもあります。職場や学校、医療機関など生活の様々な場所でHIV/AIDSに対する差別・偏見の解消を目指し、HIV陽性者が社会で安心して生活できるよう、環境を整えることが求められています。そして、感染者が治療や支援にアクセスしやすい環境作りも重要な課題です。
HIV/AIDSは、まだ終わっていない。
だからこそ、一人ひとりが自分の立場から「予防、治療、支援、理解」という具体的行動が求められていて、効果的なHIV感染予防対策を実施していく上では4つの行動すべての実践が不可欠です。

日本薬学生連盟でも各地でイベントが予定され、IPSFもFacebook上で啓発運動に取り組みます。是非、注目してみて下さい。

【愛する人を守るために】
激しいくちづけでも熱い抱擁でもHIVは広がらない、でも無関心はHIVを広げる

悲しいことにHIV/AIDSに対し未だに偏見や誤解が多いのは事実です。あまりよくわからないという声も多く耳にします。なかなか正しい理解が得られにくい病気、つまり孤独になりやすい病気というのが現状です。
薬学生なら多くの方がHIVの感染経路はご存知だと思います。無防備な性交渉による性的感染、注射針のまわし打ちによる血液感染(針刺し事故は医療現場で最も懸念される医療事故の1つですね)、そして母子感染。私は、これら3つと同様に無関心も感染を広げる要因だと思います。私には無知より無関心のほうが恐ろしいです。愛の反対は憎しみではなく、無関心。まさにその通りではないでしょうか。

異性間、同性間、親子間。愛のあり方は様々ですし、誰かや何かに縛られるべきものではなくそれを超越する力を持つと思います。私は愛が持つこの溢れるエネルギーで闘う人々の力になりたいのです。昨日より今日、今日より明日と身体の衰弱を感じ、できたことができなくなり、できていることができなくなるかもしれない。命の灯火が消える日を待ち続ける終わりの無い恐怖。やがて自分の尊厳が失われたとき、心にかけてくれる誰かはいるだろうか。愛する人は、HIV/AIDSに自分と共に向き合ってくれるだろうか。明日になったらこの悪夢は醒めるだろうか。HIV陰性の私では体の痛みも心の痛みさえも代われないけれど、正しい知識を付け、正しく理解したい。そして、支えたい。HIV/AIDSと共に生きる人々や彼らを愛する人々と寄り添って生きていたいと思います。今の私にできることは、正しく伝えることです。

まだ薬学生の私たちに大きなことはできないかもしれません。そして卒業してもできることの大きさはあまり変わらないかもしれません。でも、小さなことを大きな愛を以って行うことはできるはずです。100人に伝えることはできなくても、1人に正しく伝えることならできる気がする。どれだけ多くのことをしたか、より、どれだけ心をこめたかの方がずっと大切だと私は思います。

窓の結露に冬の訪れを感じ、温もりが恋しい季節になりました。愛を伝えて温もりを分かち合いたい誰かは心に思い浮かんでいますか。

私は、愛の数だけ人を守ることができると信じています。

最後にUNAIDSの常任理事の言葉を残します。

AIDSの感染を終わらせること、AIDS患者の全ての声を闇に消さないことが、世界中の、次世代の数百万の命に大きな影響を与えるのです。
Michel Sidibé

国際渉外部 小佐野香澄