本当はコワイ結核という病

本当はコワイ結核という病

副会長 慶應義塾大学3年 中川 翼

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9月24日から30日は、厚生労働省の定める、結核予防週間です。

【結核とは?】
皆さんは「結核」と聞いてどのようなイメージを持ちますか?
新選組で有名な沖田総司や、5000円札の樋口一葉、映画「風立ちぬ」などなど…結核は古くより日本でみられる病気の一つであり、明治時代には国民(亡国)病・労咳と呼ばれ多くの人々の命を脅かしてきた存在でした。
この病気は、結核菌が原因となり引き起こされ、感染すると菌が体内で「核」を作り、菌を産生したり、症状が出てくるようになります(発病)。初期症状は長引く風邪に似ているといわれ、発見が難しいのが特徴です(セキ、痰、発熱など)。
かつては死亡率が高く恐れられたこの病気ですが、今では医療水準・公衆衛生の向上により薬を飲めば完治するようになりました。イソニアジド・リファンピシン・ピラジナミド・ストレプトマイシン(またはエタンブトール)の4剤併用、DOTSなどと挙げると耳にしたことのある人も多いと思います。

さて、では結核はもう怖くはない病気なのでしょうか?
戦後より公衆衛生の改善が始まり、1970年まで順調に減少してきた結核罹患率ですが、実は1980年代より減少率が低くなり、ついに1996年より増加し始め、1999年には国より「結核緊急事態宣言」が出される事態となりました。一時は国民病を逃れたこの病気、今では「再興感染症」として再注目されるようになってきているのです。
今年度も4月には渋谷警視庁の署員19人が結核に集団感染し、内3人が入院。5月には都内教育機関の学生を中心に約44名が集団感染するというニュースが報道されています。

【再興感染症・結核】
なぜ、いま結核が再興感染症となっているのか。それにはいくつかの理由が挙げられます。今回は、主な2つの理由を取り上げました。

① 若者の感染者の増加
近年、強い免疫を持たない若者の増加が問題視されています。
BCG(結核)ワクチンはいわゆる「スタンプ型のワクチン」で、定期接種(国が接種時期を定めており無料(公費負担)で受けられる予防接種)となっており、接種する赤ちゃんが多いですが、周囲の結核感染者の減少により、ワクチン接種後、結核に感染してより強い免疫を持つようになるというかつてのサイクルがなくなりつつあります。そのため、ワクチンを打っていても、体内で免疫が強化されることなく、成人になって免疫が弱いために感染してしまうケースが多いといわれています。
BCGワクチンはあくまで結核の重症化を防ぐワクチンであり、「こどもの結核予防」に有効なものとされていて予防効果は十数年、実は成人の結核に対する予防効果は高くないとされているのです。BCGワクチンにより、こどもの結核の感染リスク、感染による死亡リスクは大幅に下がりましたが、その後の対策もしっかりと考えていく必要があるでしょう。
また、上記の通り結核の初期症状はかぜに似て発見しにくい病気のため、診断が遅れてしまうことで、感染者を中心に2種類以上のコミュニティーで集団感染が起こってしまうことが多くなっています。(2016年5月都内教育機関の集団感染では、同居者・学校関係者・アルバイト先と3つのコミュニティーにまたがって集団感染が起こりました。)

② 高齢者の感染者・結核の重病化
多剤耐性結核の出現や、生活習慣病などを持つ高齢者での感染の増加、HIV/AIDSとの併発などの要因により、結核が重症化する患者さんが増えつつあります。
結核診断後1年以内に結核により死亡される患者さんの死亡率は、2000年後半から上昇しつつあり、約10人に1人の患者さんが命を落とすようになっているといわれるほどになってしまいました。
日本では、若者と比較して高齢者は過去に結核患者と接触があるために、潜在性結核(「感染」はしているが「発症」はしていない)状態の方が多く、そういった方々が免疫抑制剤を利用したり、高齢化に伴う胃全摘出や、糖尿病の発症などから免疫が低下して結核を発症してしまうという事例が多いといわれています。
こういった患者さんをいち早く見つけ、院内や施設内などでの集団感染を避けることが、重要視されています。
また、HIV/AIDSの感染者は生涯で結核を発病するリスクが10倍高いとされ、悪化するリスクもより増加すると考えられています。(1984年、米国でも結核の再興が起こりましたが、その増加分の3割はAIDSが問題といわれています。)HIV/AIDS感染者が増加しつつある日本社会ではこちらの感染症とも併せて若いうちから自らを守る対策を立てていかなければならないでしょう。

【私たちにできることは?】
一歩間違えれば未だ死に至る可能性もある結核。
私たちがまず一番にできることは結核の早期発見・早期治療です。
・せきが2週間以上つづく
・たんが長期間にわたり出る
・急に体重が減る
・お年寄りの方が急に元気がなくなる
などの症状が見られたら、まずは医療機関を受診、または受診を推奨しましょう。
長い風邪かな?と思っていたら、そのせきやたんで周囲の人に結核菌を蒔いてしまっているかもしれません。
そしてかからないような予防も大事です。
適度な運動、バランスの取れた食事、十分な睡眠など、しっかり免疫がついた身体づくりを自ら行い、自分の身体は自分で守りましょう!

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最後に、このような「結核」に対する正しい知識と正しい危機感を持っていることが感染症の蔓延の防止への第一歩です。
少しでも周りの人たちにこういった最低限の知識のシェアをしたり、興味を持ったら結核についてもう少し詳しく調べてみてください。

[参考文献]
厚生労働省 結核(BCGワクチン)
NIID国立感染症研究所 結核とは
公益財団法人結核予防会 結核研究所 結核とは?
大塚製薬 結核―古くて新しい病気―
結核の常識 結核緊急事態宣言
東京都 結核の集団感染の発生について
厚生労働省検疫所FORTH 結核について
結核に署員19人が集団感染
KNOW VPD BCGワクチン
子どもの予防接種あれこれ
公益財団法人結核予防会結核研究所 疫学情報センター 「結核の統計」