予防接種はなぜ必要なのか?

副会長 慶應義塾大学4年 中川翼

毎年4月の最終週は、WHO(世界保健機関)の定める世界予防接種週間World Immunization Weekです。

【予防接種はなぜ必要なのか?】
クリニックの待合室で小さい子どもが母親にずるずると手を引かれながら「注射いや!いやだーー!!」と泣き叫ぶシーン…みなさんもどこかで一度は見たことがあるでしょうか。
子どもにとっては天敵の予防接種。けれどこの予防接種一つで、これまで世界中の子どもたちの命が何千、何万と救われてきました。
一般的にこの予防接種、「病気にかからないため」のものというイメージが強いかもしれませんが、実は更に重要な役割があります。
今回はまず初めに、予防接種の重要な役割について大きく3つにまとめました。

①病気にかからないため
ワクチンを打つことで、その疾病から赤ちゃんを守ることができます。ワクチン一つで発症すると死亡する確率が高かったり、高確率でその後後遺症が残る病気から赤ちゃんを守ることができるので、赤ちゃんの人生を幸せにするためのプレゼント、などと称されることもあります。

②まわりの人に移さないため
ワクチンの中には、効果が強いため妊婦さんや生まれたばかりの赤ちゃんには打てないものもあります。仮に自分が予防接種を受けずに病気にかかってしまった時に、近くにそんな妊婦さんや赤ちゃんがいたらどうなるでしょうか。自分のお嫁さんや、こどもだったら?予防接種を受けていなかった父親が風しんに罹り、そこから妊婦(母親)に風しんが感染、生まれてきたこどもが先天性風しん症候群を発症し、生まれつき目が見えなくなってしまったという悲しい症例もいまだにあるそうです。自分の大切な人を守るためにも、予防接種を受けることは大切です。

③感染時に軽い症状で済ませるため
現在では、公衆衛生の発展により予防接種なしでもこどもの頃に感染症にかからず成人になることができる人が増えてくるようになりました。しかし、そういった人が大人になってはしかや結核にかかり重症になる事例が最近増えてきており、問題視されています(再興感染症)。つい先日の4/24にも、金沢で40代の女性や30代男性など成人3名が麻しんに感染するニュースが流れていました。そんな感染症が流行したときにも、予防接種を打っておくことで症状を軽く済ませることができるといわれています。

【日本の予防接種を知ろう!】
さて、そんな予防接種ですが、日本ではどのような予防接種を受けることができるのでしょうか?今回は国立感染症研究所の予防接種スケジュールに掲載されているワクチンを取り上げました。
http://www.niid.go.jp/niid/images/vaccine/schedule/2016/JP20161001.png
は大きく2種類に分かれています。

①定期接種
:国や自治体が接種を勧奨
まず、日本の予防接種しているワクチン
ほとんどが定められた期間内に摂取すれば無償(公費負担)で受けることができます。(自治体による)

②任意接種
:①以外で日本で接種することができるワクチン
任意ではありますが、おたふくかぜワクチンなどはアメリカなど多くの国で接種が推奨されているワクチンであり、どれも赤ちゃんが健康に育つための予防としては重要なワクチンです。
さらに、①定期接種は2種類に分かれます。

ⅰA類疾病ワクチン
:集団予防を目的とするワクチン(努力義務・推奨義務あり)

ⅱB類疾病ワクチン
:個人予防を目的とするワクチン(努力義務・推奨義務なし)

特に、①-ⅰ定期接種のA類疾病ワクチンは重要視されており、HPVワクチンやB型肝炎ワクチンなど、こどものうちに接種をしておくことで将来的にがんなど重い疾病の予防にもつながると言われているワクチンが続々と誕生しています。
接種率も総じて高く、一見充実した日本の予防接種制度。しかし、その裏で今も様々な議論が飛び交っています。
そういった議論について、最後に日本の予防接種に潜む問題点の中でも大きな問題を1つピックアップしました。

【接種率の伸び悩み】
①-ⅰ定期接種のA類疾病ワクチンのほとんどは接種率が95%を超えていますが、なかなか100%に達しないものがほとんどです。この原因は一般的に2つあるとされています。
(1)予防接種のスケジュールを立てるのが難しい!
定期接種のワクチンだけでも10種類、しかも定期接種は決められた期間内に予防接種を受けさせる必要があります。また、37.5℃以上の熱がある場合は一般的に予防接種を受けることができないため、働くお母さんがせっかく休みを取って病院に連れて行ったのに予防接種を受けさせられずタイミングを逃す…ということもあるそうです。現在ではこういった問題を解決するために複数ワクチンの同時接種をより一般的な医療行為として日本にも普及していこうという動きがあります。

(2)情報の錯綜
インターネットが普及した現代では「予防接種 安全」と調べるだけで「ワクチンの必要性・安全性」というワードと「ワクチンの罪、乳幼児死亡」といったワードが同時に混在して出てきてしまいます。こどもの健康を第一に思う親だからこそ、ちょっとした危険性からもこどもを守りたいはず。そのためにワクチンを接種しない決断をする家庭が増えてきているそうです。正しい情報を得た上で本当に接種させないべきなのか親に考えてもらうためにも、専門的知識を持っている医療者からの正しい情報発信が必要とされています。

【私たちにできること】
将来の健康のための大きな投資であると言われている予防接種。
今の私たちが一番にできることはワクチンや予防接種についての正しい知識をつけることです。
何故、予防接種をしなければいけないの?
この予防接種っていつ受ければいいの?
予防接種の持つ危険性って?
地域包括ケアの中でゲートキーパーとしての役割を薬局が求められると議論されている今、ふとした瞬間に、誰かのそんな質問に答えられる力は今後役に立ってくるのではないかと思います。
現在薬剤師が予防接種に関わっている瞬間はほんの一瞬かもしれませんが、一医療者として医療の一端である予防接種について正しい知識をつけ、正しい情報提供を行うことがこれからは求められてくるのではないでしょうか。
そういった一人ひとりの小さな働きが、社会全体の予防につながり、やがて日本全体が今よりも更に健康な国を作っていくことができればと思っています。
今年のWorld Immunization week テーマは「#VACCINESWORK」。
日本の健康のために、まずは少しでも「予防接種」について調べてみて、このハッシュタグを広めるところから始めてみませんか?

横浜市衛生研究所http://www.city.yokohama.lg.jp/kenko/eiken/idsc/disease/#kakkoku
All About どちらが危険?予防接種を受けるvs受けないリスクhttps://allabout.co.jp/gm/gc/377344/
JPGH「世界予防週間(4/24-30)」に向けてhttp://jigh.org/policy_research/1116
ワクチン.net http://www.wakuchin.net/about/universal.html
NIID国立感染症研究所http://www.niid.go.jp/niid/ja/vaccine-j/249-vaccine/585-atpcs001.html
厚生労働省 予防接種情報http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/yobou-sesshu/index.html
日本小児科学会の予防接種の同時接種に対する考え方https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/saisin_1101182.pdf
Know・VPD!http://www.know-vpd.jp/