#1「104回薬剤師国家試験からのメッセージ」

「104回薬剤師国家試験からのメッセージ」

1.薬学部6年生事情
 テストやレポート、CBTOSCEと様々な試練を乗り越えてきた薬学部6年生ですが、その前に壁は次々と立ちはだかります。就活と並行しながらの卒業研究、それが終われば国家試験に向けた勉強が始まります。しかしそうはいっても、学生最後の年。友達と遊びたい、旅行にも行きたい、お金も貯めたい。頭の中がごちゃごちゃになりながらマルチに生きているのが薬学部6年生です。

 さて、その弊害はどこに出てくるのでしょうか。私は文系学生とも関わることが多々あったのですが、彼ら彼女らはとことん就活をします。「自分」というものを細かく見つめ直し、グループディスカッションや面接の対策も必死でします。一方の薬学生は様々な課題が立ちはだかり、自分の未来や進路に対して十分に考える時間がないということに陥りかねません。もちろん他学部の学生にも様々な活動をしながら、就活を両立している人はたくさんいるので、言い訳に過ぎないのかもしれませんが、全体的に見て就活に多くの時間を割かない人は多いようです。(参考:https://bslink.jp/contents/text/c140/

 多くの場合は、薬剤師として臨床現場に出てから、解決したい課題や自分の成し遂げたい夢が見つかるのだと思います。しかし、自身の歴史から見えてくる価値観や芯を把握せずに進路を決める薬学生が多いことは、問題視するべきかもしれません。

  1. 104回国家試験を終えて

 そんなドタバタな薬学部6年生にとって、国家試験は乗り越えなくてはならない最後の壁です。「もう間に合わない」「ダメかもしれない」と思いながら、ドキドキの状態で国家試験を受けた人も少なくはないのではないでしょうか。国家試験は合格さえしてしまえば、薬剤師の資格を得ることができます。合格通知が届いたあとに、国家試験を見返す人はほとんどいないでしょう。

 しかし、この国家試験にはこれからの薬剤師として求められる姿が込められているのだと思います。薬剤師が国家資格である以上、国の求める薬剤師の姿を私たちは把握していなければならないと思います。そんな観点から104回国家試験をみてみると、どんなメッセージが込められているのでしょうか。私が印象深かった問題を紹介したいと思います。
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82歳女性。介護保険施設に入所中に転倒し入院。(抜粋)
持参薬:アムロジピン、カンデサルタン、レバミピド、アトルバスタチン、センノシド

予後の改善が期待できるとして、薬剤師が医師に伝えた内容を選択せよ。

Treatment With Multiple Blood Pressure Medications, Achieved Blood Pressure, and Mortality in Older Nursing Home Residents: The PARTAGE Study

JAMA Intern Med. 2015;175(6):989-995. doi:10.1001/jamainternmed.2014.8012
1 アムロジピン中止
2 アトルバスタチン中止
3 アムロジピン、カンデサルタン中止
4 アムロジピンとカンデサルタンを合剤にする
5 現在の治療継続
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 私自身高齢者へのポリファーマシーに関する研究をしていたこともあり、特に意識してしまった部分もありますが、この問題はこれからの薬剤師におけるひとつの在り方が示されていると思います。この問題は、多剤併用している患者の治療における医師への提案として、どの薬を減らせばいいかをデータから読み取り、選択肢を選ばなくてはなりません。ポリファーマシーの改善はただ単純に薬を減らせばいいということではなく、その患者にとって不適切な処方を是正するという広い捉え方をされています。今回の問題でいうと、2剤以上の降圧剤を使用していると生命予後が悪いというデータを読み取って、アムロジピン削除の提案をするという選択肢が導き出されます。薬剤師も人間です。薬に関する全ての事柄を常に頭で把握しておくのは困難でしょう。しかし、薬剤師は「調べ方」を知っています。その「読み取り方」も勉強しています。「薬」のプロフェッショナルとして、患者に最善の治療を行うために、信憑性の高いエビデンスを提示して、積極的に医師に提案していくことが求められていると思います。重要な課題のひとつである「ポリファーマシー」の改善には薬剤師がそのスキルを発揮して、医師と協働していくべきではないでしょうか。私は国家試験からそんなメッセージを受け取りました。

3.社会人への門出にて
 これから社会も医療もますます形を変えていくことでしょう。今の常識が1年後に変わっていることもあるかもしれません。私はこれから薬剤師として現場で患者と接していくことになりますが、背中にのし掛かってくる責任はとてつもなく重いものだと認識しています。世の中の動きを感じ、社会の流れを読み、患者の最善を常に考えながら、働いていこうと思います。

(立命館大学6年 小池 雄悟)

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