#4【食品衛生月間】リスクコミュニケーションの重要性

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ついに暑い夏がやってきました。気温の上昇と共に忍び寄る危険、それは食中毒です。特に気温の高い8月は食品の腐敗が早く、食中毒が流行します。昨年(平成30年)の食中毒発生数は患者数 17,282 人、事件数1,330 件、 死者数は 3 人と報告されています(厚生労働省調査)。そこで厚生労働省は食品食中毒事故を防ぐため、全国的に食品衛生思考を広め、食品に対する安全性のリスクコミュニケーションへの充実を図ることを目的に8月の1か月間を食品衛生月間と定めました。厚生労働省のホームページでは消費者に向けた食中毒の注意喚起だけではなく、食品を提供する事業者、さらに医療人向けの情報も載せられています。子供から高齢者まで幅広い年代にも理解できるように、マンガや動画を使ってわかりやすく説明されています。(『家庭でできる食中毒予防の6つのポイント』https://www.youtube.com/watch?v=TI03jn2ElbU

「つけない!・増やさない!・やっつける!」
 食中毒を防ぐための合言葉と言えば「つけない!・増やさない!・やっつける!」
中学校・高等学校の家庭科の授業等で学んだ人も多いかと思います。

まず一つ目の菌を「つけない!」対策法とは、食物に触れる時は念入りに手を洗い、料理の時は肉・魚などの生ものと野菜の調理器具は併用しないことなどが挙げられます。

二つ目の菌を「増やさない!」方法とは、購入した食品を常温で保存しないことです。また、頻繁に冷蔵庫を開けたり大量の食品を隙間なく入れたりしてしまうと、冷蔵庫内の温度が上昇して菌が増える原因となります。冷蔵庫は開けたらすぐ閉める、食品は必要な分だけ入れるなども菌を増やさない方法の一つと言えるでしょう。

最後の三つ目は「やっつける!」。正しい知識がないと菌を完全に“やっつける”ことはできません。一般的に知られている殺菌方法といえば加熱があります。しかし、例えば芽胞(細菌がつくる非常に耐久性の高い被膜)を形成するA型ボツリヌス菌の毒素は水の沸点である100℃の熱では失活せず、完全に毒素と芽胞をなくすためには120℃以上で20分の加熱が必要です。(篠田純男『家庭で防げる食中毒』より)

正しい知識で食中毒を防ごう!
菌の性質は熱に強いもの・酸に強いもの・冷凍しても失活しないものなど様々あります。繰り返しになりますが菌の性質を知り、正しい知識がないと菌を完全に倒すことはできないのです。

しかし、実際のところは菌(微生物)の中で人間に食中毒事故などの悪影響を及ぼすものは少なく、菌が人間の生体に及ぼすのは良い影響の方が多く私たちの生活に欠かせない存在なのです。食中毒防止のための検査を徹底して行っている事業者でも、菌と共存している私たちの生活の中から菌をゼロにすることは不可能に近い。だからこそ消費者一人一人が事業や行政から正しい情報を取得する、いわゆるリスクコミュニケーションが食中毒事故を未然に防ぐ要になるのではないでしょうか。夏休みを楽しい思い出にするためにも、食中毒は他人事ではなく自分事であることを心に留めておきましょう。
(東邦大学2年 小林幸恵)

参考文書:篠田純男『家庭で防げる食中毒』
参考サイト:厚生労働省https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000049664.html