#25「新型コロナウイルスの抗体検査を受けてみた」

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 2020年5月下旬、1か月近く続いた緊急事態宣言が一応は解除され、徐々に日常の生活が戻ってきていると感じられます。しかし、ピークが過ぎたとはいえ感染者の増加はいまだに続いており、まだまだ安心はできません。つい先日には1万人を対象にした無作為抗体検査の実施が発表されました。
 新型コロナウイルスは若者の多くが無症状といわれており、抗体検査で陽性率が〇〇%という報道がなされるとき、実は自分もすでに感染していたのではと考え不安になる人も多いことと思います。今回、私は自宅に検査キットが送付されてくるタイプの抗体検査を受けてみました。
 このコラムは新型コロナウイルスの抗体検査を勧めるものではなく、あくまで一個人の体験として読んでいただければ幸いです。

まるでオンラインショッピング

 私が利用したのはオンライン医療相談と自宅での検査がセットになった遠隔医療相談なるサービス。WEBページ上で「渡航歴」「発熱状況」など簡単な質問に答えていくと検査キットの購入ページに進みました。かかった費用は税込み8,360円。あとは届くのを待つだけです。
 ちなみに、私は平熱がやや高い方であり、購入当日の体温は37.0度でした。37.0度以上37.5度未満が続くと何とも言えないモヤモヤが残ります。
 ポストに検査キットが投函されたのはそれからわずか数日後のこと。抗体検査キットが品切れになったというニュースを多く聞いていたので、その速さにはやや驚きました。

検査キットはこんな感じ

同封物とカセットの入った袋
イムノクロマトグラフィー用のカセット

 届いた検査キットには説明書、本体のほかにスポイト、滅菌希釈水、微量採血用穿刺針、アルコール綿が同封されていました。心の準備をした後は指先を消毒して自己採血を行います。
 一文で簡単に書きましたが、ここで時間がかかる方も多いのではないでしょうか。というのも、同封されていた穿刺針はよくあるワンタッチタイプではなく本当にただの針。体感としては、安全ピンをわざと自分の指先に刺すのと大差ない葛藤がありました。
 もっとも、痛み自体はそこまでありませんでしたが、注射が苦手な人には非常に厳しいものがあるかと思います。

検査結果は……

 採血後はスポイトでカセットに血液と滅菌希釈水を2滴入れ、水平を保ちながら結果を待ちます。このとき、サンプルや希釈水を入れすぎると正しい結果が得られない場合もあるようです。
 5分後、コントロールライン(C)にラインが出ていれば検査が成功、出ていなければ失敗です。判定結果はG(IgG)、M(IgM)にラインが出ているかどうかで判断します。結果は写真の通りどちらも陰性でした。つまり、これまでに感染していない可能性が高いことが推定されます。

微量採血用穿刺針
抗体検査結果(陰性)

判定結果に感じるモヤモヤ

 今回の結果は「陰性」ではありますが「感染歴がない」とは断言できず、「感染していない可能性が高いことが推定される」にとどまります。また、感染歴がある(抗体を保有している)からといってそれがイコール他の人に感染させない、今後絶対に症状が出ないということではありません。
 「陽性」だった場合はいつどこで感染したかもわからず、他の人にどこかで感染させてしまっていることも考えられるので、どちらの結果であれ何とも複雑な気持ちになると思います。

使用した検査キットについて調べてみた

 今回届いたキットは中国のShanghai Liangrun Biomedicine Technology Co., Ltd.(上海良润生物医药科技有限公司)製のようでした。なぜあいまいな表現になっているかというと、なんと検査キットにもパッケージにも社名が印字されていなかったのです。なので、確かめようがありませんでした。社名はサービスを提供しているサイトに問い合わせて確認しました。
 サービス提供会社によると、この検査キットは中国のみならず米国FDAのEUA(緊急使用許可)を与えられていると説明がありました。EUAを与えられているSARS-CoV-2検査キットはFDAのWEBページ(英語)で閲覧することが出来ます。
 しかし、この会社の名前はリストに載っていません(2020/6/2現在)。さらに詳しく調べると、どうやらまだ前段階にあるようでした。EUAを与えられた検査キットと表現するのはやや正確性に欠けます。
https://www.fda.gov/medical-devices/emergency-situations-medical-devices/faqs-testing-sars-cov-2(英語)(Q: What laboratories are offering serology tests under the policy outlined in Section IV.D of the Policy for Coronavirus Disease-2019 Tests? 内のリストより)

 もっとも、この会社の検査キットは相模原協同病院でも試験が行われており、製品ページ(中国語)にその結果が示されています。詳細はリンク先をご確認ください。
 ところで、製造会社のニュースページ(中国語)には気になる記載がありました。日本で始まる1万人規模の抗体検査にこの会社のキットが5000個使われるというのです。私の居住地はその対象にはなっていないので偶然とはいえある意味、貴重な体験をしました。

さいごに

 今回利用したサービスのWEBサイトには検査キット製造会社の情報が一切記載されておらず、問い合わせにも正確とは言えない回答がなされました。検査キットが自宅に郵送され、セルフで行うタイプの抗体検査を提供している会社はいくつかあるようです。しかし、どれも診断に用いるためではなくあくまで研究用として提供されていました。診断の確定にはPCR検査が必要であるとされています。
 提供されている多くの抗体検査キットは定量検査ではなく定性検査です。つまり、抗体の有無は推定できますが、抗体量についてはわかりません。抗体検査の結果がどちらであっても、明日からの行動に変化が起きることはありません。緊急事態宣言が解除されたとはいえ、感染予防対策はまだまだ必要そうです。

(2020年度プロモーション部 スタッフ)