「ワールドキャンサーデー」とは?
毎年2月4日は「ワールドキャンサーデー」であり、一人ひとりががんに関する意識を高めて、がんに立ち向かうための行動を起こすことを目的として世界各地で様々な取り組みが行われます。この取り組みは2000年2月4日にパリで開催されたがんサミットから始まりました。本年度は「Close the Care Gap(がん医療のギャップを埋めよう)」をテーマとし、がん医療において公平性が損なわれている現状を理解して、この不公平性が与える社会への影響を考え直すことを目指しています。
がんとは?
がんは、体内の正常な細胞が変異し、細胞が異常に増殖を続けて腫瘍という塊を形成する病気です。腫瘍は治療せずに放置すると、成長して周囲の正常な組織や、血流、リンパ系を介して他の器官に影響を及ぼすこともあります。全世界で毎年1000万人ががんで亡くなっており、その70%は低・中所得国で起きています。また一般的ながんの少なくとも3分の1は予防が可能であるといわれています。
医療の公平性
世界の人口の半分は医療サービスを十分に受けることができていません。近年、がんの予防、診断、治療は目覚ましい進歩を遂げているにも関わらず、基本的な治療でさえも受けられない人が多くいます。公平性に関する格差は先進国と途上国間での問題だけではありません。教育や地理的な条件、民族、人種、性別、年齢、障がい、ライフスタイルなどによっても格差が生まれています。以下にその例を示します。
・米国では白人女性の子宮頸がんの5年生存率が71%であるのに対して、黒人女性の場合はわずか58%となっている。
・ニュージーランドでは、マオリ族はマオリ族でない人の2倍の確率でがんで死亡している。
・小児がんの生存率は、高所得国では80%以上であるのに対して、低所得国では20%である。
・医療従事者による差別により、トランスジェンダーの人々のがん検診の受診率は他の人々よりも低くなっている。
公平な医療とは
すべての人が社会的地位や、その他の状況により生じる障壁や制限なしに、健康の潜在能力を最大限に発揮できる機会が得られた場合に、公平な医療が達成されます。そのためには、がん予防についての教育、地域医療でのプライマリヘルスケアの強化、それぞれの国に合わせた政策の実施などが必要となります。実際に、カナダでは先住民の医療格差を解消することを目的とした施策が実施されたり、各国から集められた資金により貧しい地域に住む8400万人の少女に子宮頸がんワクチンの接種を提供したりすることが決定しています。課題の解決にはさまざまな方法で取り組むことができます。まずは私たち一人ひとりががん治療における不平等について知り、理解することが必要ではないでしょうか。
【参考文献】
・「ワールドキャンサーデー Close the care gap – UICC日本委員会」
https://www.worldcancerday.jp/index.html
・「Official website of World Cancer Day by UICC | 4 February」
https://www.worldcancerday.org/
・「UICC(国際対がん連合)日本委員会」
https://www.jfcr.or.jp/UICC/index.html
・「WHO | World Health Organization」
https://www.who.int/
2021年度交換留学委員長 大阪大学3年 中井悠花