#46 「3月24日は『世界結核デー』」

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皆さんこんにちは。
3月24日は世界結核デーです。1882年にロベルト・コッホ博士が結核の原因となる細菌を発見したと発表した日であり、結核が健康、社会、経済に与える壊滅的な影響についての一般の認識を高め、世界的な結核の終息に向けた取り組みを行っています。

皆さんは結核という疾病をご存知でしょうか。

結核は結核菌が体の中に入ることによって起こる病気で、依然として世界で最も致命的な感染症の1つです。患者数及び罹患率(人口あたりの新規結核患者数)は順調に減少しているものの、日本国内でも年間10,000人以上の新しい患者が発生し、約2,000人が命を落としています。結核菌は主に肺の内部で増え、咳や痰、発熱、呼吸困難等、風邪のような症状を呈することが多いですが、肺以外の臓器が冒されることもあり、腎臓、リンパ節、骨、脳など身体のあらゆる部分に影響が及ぶこともあります。特に、小児では症状が現れにくく、全身に及ぶ重篤な結核に繋がりやすいため、注意が必要です。

2020年以降、結核による死亡者が世界的に増加しています (10年以上ぶり)。また、新型コロナウイルス感染症の影響により、医療機関への受診控えや結核健診の受診率低下がみられます。結核は症状に気づきにくいため発見・治療が遅れてしまいやすく、進行すると咳やくしゃみによって周りの人に感染させてしまうリスクが高くなります。そのため、気づかぬうちに重症化や集団感染といった事態になってしまう危険があります。したがって、早期発見・診断が重要となります。対象となる方は定期的に健診を受け、長引く咳や痰、微熱、体のだるさなどが現れた場合は医療機関を受診しましょう。

結核予防の方法としてBCGワクチンの接種があります。生後1歳までのBCGワクチン接種により、小児の結核の発症を52~74%程度、重篤な髄膜炎や全身性の結核に関しては64~78%程度罹患リスクを減らすことができると報告されています。また、一度の接種で10~15年程度効果が続くと考えられています。日本の結核患者の発生率は米国の4倍程あるにも関わらず、小児に限ると米国の小児の患者の発生率を下回っており、その一因はBCG接種の効果ではないかと言われています。副作用として、リンパ節の腫れや局所・全身の皮膚症状などの比較的軽度な局所反応は一定の頻度でみられますが、骨炎や全身性のBCG感染症、アナフィラキシーなどの重大な副反応の報告は稀です。成人での接種は有効性が確認されておらず、コッホ現象(※1)の誘因になるとされていることから、推奨されていません。

世界結核デー2022年のテーマは「Invest to End TB. Save Lives.」
世界における結核撲滅への取り組みを強化し、達成するための投資の必要性を伝えることを目的としています。これは、結核の撲滅を妨げているCOVID-19が拡大する状況下において特に重要です。2022年の世界結核デーでは、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(※2)に基づき、予防と治療への公平なアクセスを確保する必要性が強調されます。

2020年の日本における結核罹患率(人口10万人当たり)は10.1となっていますが、厚生労働省では、罹患率10以下の低蔓延国になることを目指し、特に外国出生者や高齢者での結核早期発見の強化などを含めた総合的な結核対策に取り組んでいます。

結核は防げる疾病です。バランスのとれた食事や十分な睡眠、適度な運動、ストレス解消を図り、結核菌に対する抵抗力をつけましょう。また、手洗いやマスク着用の習慣をつけるなど、基本的な感染症対策を行いましょう。

※1……コッホ現象とは、既に結核に感染している方にBCGワクチンを接種すると起こる、早期の局所的反応のこと。局所反応は接種後数日以内に強く起こり、徐々に消退する。コッホ現象が見られたときは、結核感染を調べる検査を行い、発病していなくても結核に感染していると判明した場合は潜在性結核感染症の治療が必要。
※2…ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)は、「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成目標の1つであり、全ての人々が基礎的な保健医療サービスを、医療費を支払うことで受けられる状態を指す。国連は毎年12月12日をUHCデーと定めている。

参考
https://www.paho.org/en/campaigns/world-tuberculosis-day-2022

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou03