〈研究コラム前半~みんな寝れてる?睡眠の質に関する実態調査~〉
皆さんこんにちは!19年度学術委員長を務めました、山川碧です。今回は学術委員会の活動のうち、調査研究を行っている『研究班』をご紹介します!学術委員会は、いくつかの『研究班』を結成し、学会発表などを目指しており、その中の『睡眠班』は、睡眠に関する研究を行っています。
皆さんは日中眠いと感じる、朝起きてもすっきりしないと思ったことはありますか?そんな日常の悩みから『睡眠班』は結成され、「睡眠に困っている薬学生はどれくらいいるのだろうか?」「睡眠の質を上げるものとして何かあるのだろうか?」ということについて調べました。睡眠に関して興味がある方、不眠症の方は是非ご覧ください!
〈アンケートの紹介〉
学生の間で、自身の睡眠の質が低いという声をよく聞きます。でもそれは本当に睡眠不足から来ているものなのでしょうか?本当はそう思い込んでいるだけかもしれません。本研究では、それを自分たちで統計的に確認することと、睡眠の質に関する新しい因子を発見することを目的としました。今回『アテネの不眠尺度』という尺度を用いて不眠の度合いを点数化し、薬学生の睡眠の質を調査しました。それ以外に自分たちが睡眠に関すると思った質問項目や睡眠の質についての自覚に関する質問項目をつくり、統計手法を用いて検定を行いました。
〈アテネの不眠尺度とは?〉
世界保健機関(WHO)が中心になって設立した「睡眠と健康に関する世界プロジェクト」が作成した不眠の度合いを調べる尺度のことを指します。このアテネ不眠尺度には、全8問の簡単な質問があり、それぞれ4つの選択肢の中から自分の程度に最も合ったものを選択し、各項目に割り当てられた点数の合計点で診断するというものです。一般的に4点以上で睡眠不足の疑いがある、6点以上が睡眠不足であると言われています。
アテネの不眠尺度
〈不眠症の自覚について〉
62人にアンケートを取ったところ、43人(約67%)が「自分は睡眠不足であると思う」と答えました。半数以上が睡眠不足だと感じているようです。
次に「睡眠について困っていることがあるか」という質問に対して、それぞれ「はい」「いいえ」の2群に分けました。これらの2群にアテネの不眠尺度の点数に違いがあるのかをエクセルを用いて統計的な検定で確かめたところ、「はい」「いいえ」の二つの群に対して差があることが確かめられました。
同じように方法で「自分は睡眠不足であると思うか」という質問に対して検定を行ったところ、「はい」「いいえ」の二郡の点数の平均値に統計的に差がみられることがわかりました。
図より、どちらの質問に関しても「はい」と答えた人のほうがアテネの不眠尺度の平均値が高い傾向にあります。これは「はい」と答えた人は実際に不眠症の割合が高かったためであり、自身を睡眠不足であると自覚している学生は実際に睡眠不足であったと考察できます!地自分が睡眠不足と感じたら、ちゃんと睡眠時間はとったほうが良いかもしれません。
さらに、20代から70代を対象とした睡眠の質の調査をした先行研究と私たちの研究を比べ、薬学生の睡眠の質が社会人と比べどのような特徴がみられるか調べました。(先行研究①)
先行研究によると、不眠の疑いがあるというアテネの不眠尺度の点数が6点以上の人の約6割が不眠の自覚がないと書かれています。 一方、本研究では不眠症の疑いがある4点以上の集団の26%、病院受診を推奨される6点以上の集団の20%が不眠の自覚がないという結果になりました。
私たちは、本研究と先行研究との結果の違いは、学生と社会人との間のライフスタイルの違いによるものであると考察しました。実際に社会人はお金を稼ぐ立場であり自ら行動しなければなりません。そのような意味では、眠気を気にしている余裕はないと考えられます。その一方で、学生は大学の授業など受け身の生活を送っている方々が多いように思われます。このような生活習慣の違いが、眠気の自覚に違いを及ぼしたのではないかと推察しました。また先行研究と比べてアンケート対象者が格段に少なかったため、正確なデータが得られたとは言えなかったことにより、このような結果が得られたのではないかと考えられます。
後半に続く→