皆さんこんにちは。肌寒い季節となってきましたが、いかがお過ごしでしょうか。
私は、対面授業が始まり、CBT(Computer-Based Testing)やOSCE(Objective Structured Clinical Examination)に向けた演習に明け暮れる日々を過ごしております。
さて、10月17日~23日は「薬と健康の週間」ということで、今日は私がOSCE演習を通して感じたことをお話ししたいと思います。
先日学内で行われた服薬指導のコミュニケーション演習。
模擬患者は教授、周りには同じ班の学生数名。課題は高血圧(アダラート錠、1日3回、28日分)。
練習にかけられる時間も少なかったため、評価項目リストを思い出しながら、取りこぼしの無いように応対するので精一杯でした。
評価項目のほとんどをこなし、最後に「質問はございませんか?」と尋ねました(定型文です)。
何もなければ、このまま終わるつもりでしたが、
「この薬って、余ったら人にあげてもいいですかね?」
と問われました。予想していなかったので、頭が真っ白になりました。
その時の私には、“薬の譲渡をしてはいけない”という認識はありましたが、その理由について知ろうともしていなかったからです。
とりあえず、時間内に終わることを優先し、「〇〇様の体調に合わせて処方されているお薬なので、28日分しっかり飲み切ってください。」とだけ答え、演習を終えました。
その後のフィードバックで、教授や他の学生から、「評価項目はすべてクリアしていたし、全体的に良かった。ゆっくり話していたし、アイコンタクトもできていた。質問にもスムーズに答えられていた。」とお褒めの言葉をいただきました。一方で、「最後の質問でもっと確証を持った返答ができれば良かったし、聞かれた瞬間少しソワソワしていた。」とご指摘いただきました。もちろん、OSCEではそこまで問われないでしょう。しかし、臨床現場では聞かれることもあるかもしれません。私自身は病院や薬局で薬をもらった時になぜ譲渡してはいけないのかの説明を受けたことはありませんでしたし、気にしたことはありませんでしたが、気になったので、後日調べてみました。
【医療用医薬品の定義】
特定の患者を診療した医師が、その患者の病状や体質等に応じて、薬の種類や服用量等を適切に指示した処方箋に基づき、薬剤師による調剤によって処方される特定患者専用の医薬品のこと。医師が処方した薬は、特定患者専用の医薬品であることから、他人に譲り渡し服用させた場合、治療効果が得られないばかりか重大な健康被害を及ぼす可能性がある。
【医師が処方した薬を他人に譲り渡した場合】
「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)」または「麻薬及び向精神薬取締法」に抵触し、「3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金、又はこれを併科」「5年以下の懲役、又は情状により5年以下の懲役及び100万円以下の罰金」等の罰則を課せられることがある。
・薬機法第24条:薬局開設者または医薬品の販売業の許可を受けた者でなければ、業として、医薬品を販売し、授与し、又は販売若しくは授与の目的で貯蔵し、若しくは陳列(配置することを含む。)してはならない
・麻薬及び向精神薬取締法24条:麻薬営業者でなければ、麻薬を譲り渡してはならない。
・麻薬及び向精神薬取締法26条の16:向精神薬営業者(向精神薬使用業者を除く。)でなければ、向精神薬を譲り渡し、又は譲り渡す目的で所持してはならない。
皆さんは知っていましたか?
私は、思っていたよりも重い罪に問われることに驚きました。
薬機法の条文は講義で習って知っていましたが、医療者しか対象として想像ができてなかったことに気づきました(調べてよかった…!)。
セルフメディケーションが推奨される今日。
「家族や友人に自分の薬を分けてあげる」という何気ない厚意の行動が、人を傷つける可能性があり、法を犯してしまうということを、もっと広く知ってもらいたいと思いました。また、薬剤師は薬の専門家として、薬を正しく使ってもらえるよう周知していかなければならないと、改めて感じました。
徳島文理大学 4年 露口風花
【参考】
厚生労働省「薬と健康の週間」:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kusurikenko_r2.html
薬機法:https://hourei.net/law/335AC0000000145
麻薬及び向精神薬取締法:https://hourei.net/law/328AC0000000014
薬事日報社:「薬事関連法規・制度 解説」