春の日差しを感じられる季節となってきました。皆さんはいかがお過ごしでしょうか。
このコラムでは、新型コロナウイルス感染症拡大防止対策に関してお話し、若い人々に自分たちの“今“の行動を改めて見直すきっかけにしていただきたいです。コラムの最後には、先日実施した薬学生の新型コロナウイルスに対する意識調査アンケートについても記載しましたので、最後まで読んでいただけると嬉しいです。
~ウィルスに協力しないでください~
私は年度末の試験期間中、「これが終われば、楽しい春休みが待っているから!」と自分を奮い立たせて勉強に励んでいました。そのころにはすでに、春から夏までの予定を手帳に書き込み、2020年はどんな一年になるのか思い描いていたものです。しかし今では、手帳が“中止”の文字で埋め尽くされてしまいました。みなさんの中にも楽しみにしていた行事が無くなり、悲嘆に暮れている方がいらっしゃることでしょう。
今現在、COVID-19の感染症拡大はアジアに留まらず、世界各国に広がり続けている状況です。毎日のように感染者数が増大し、世界の人々は不安な日々を送っています。
しかし一方で、授業開始の延期が決定して「休日が増えてラッキー」という安易な考えを持っている人も多いのではないでしょうか。こんな状況でも、重症化するリスクが低い若者にとっては「コロナなんて関係ない!友達と遊ぼう」と平然と街に出歩く人もいるようです。(現在、若者も重症化するケースが報告されており、より危険な状態とも言えます。)
ただ皆さん、一度足を止めて考えてください。
今、あなたがしようとしていることは、“今”やらなければいけない事でしょうか。本当に必要なことでしょうか。
自分がウイルスを持っていないという確実な証拠はありますか。自分の行動によって多くの人にウイルスを媒介していませんか。
重症化しないと言われている私たち若者がのうのうと街を歩き回ることで、ご高齢の方や持病を持っている方、さらには小さい子供たちの命を脅かしていることを自覚してください。
そして授業の開始が延期されている今、皆さんのもとにも大学の先生方から新型コロナウイルス感染症に対する注意喚起のメッセージが届いているのではないでしょうか。私たち日本薬学生連盟も立命館大学の宇高先生より、お言葉を頂きましたのでご紹介させていただきます。
微生物学を修得した薬学生はウイルスの性質をよく理解していることでしょう。そんな私たちが、ウイルス増殖に加担する行動を取る様なことがあってはなりません。
もちろん、「友達と出かけたい」とか、「時間があるのに外に出ないなんてもったいない」と思う気持ちはとてもわかります。ただこのご時世だからこそ、オンラインで顔を合わせて交流できるコミュニケーションツールを活用しませんか。私たちの工夫や協力次第で、新型コロナウイルスの流行を収束できる可能性は大いにあります。安直な考えを持つ若者の行動に「待った」をかけるためには、若者同士が協力してその風潮を作っていかなければいけないのです。
~外出自粛時間を活用する~
みなさんは、外出を自粛している時間を何に活用していますか。
今まで学生生活やアルバイトで忙しかったという人は、在宅時間が増えることで、改めて自分自身について考える時間にできます。毎日のようにバイトをしていて学業に専念できていなかった人は、この時間を活用して勉強に充てられます。時間がある時こそ、その時間を自分のステップアップのための準備期間だととらえれば、家での時間も有意義なものになるのではないでしょうか。
~薬学生の感染防止に対する意識は高い?~
さて、ここからは先日実施したアンケートについてお話します。
急遽かつ短時間の実施でしたが、北海道から熊本まで22の都道府県に住む182人の学生が回答してくれました。皆様のご協力、誠にありがとうございます。
今回のアンケートでは、薬学生の新型コロナウイルス感染症に対する捉え方、感染拡大防止対策、自粛中の過ごし方を主に聞いてみました。
[あなたは不要不急の外出を自粛していますか]
「はい」と答えた学生が圧倒的に多かったことに安心しました。
一つ気になったことは、学生の中でアルバイトを“不要不急の外出”に含めている人と、そうでない人に分かれたことです。外出の主な目的に「アルバイト」を記入した学生の数は全体の65人でした。それが急を要する用事だと考えているのは、そのうちの86%でした。薬学生に限らず、誰しもが生活や娯楽のためにお金を必要としています。これを完全に制限できないことも感染症の収束を遅らせてしまっている原因かもしれません。
その反対に、残りの14%はアルバイトを不要不急の外出だと考えていることがわかります。また、そのほとんどが新型コロナウイルスに対して「危機感がある」と答えています。このことから、感染症に対して危機感もあり、アルバイトは急を要する用事ではないと考えてはいるが、アルバイトには出勤はしなければならないというジレンマに悩まされている学生が少なからずいるということがわかりました。
[外出を自粛しているときは何をして過ごしていますか]
(選択肢:勉強・ゲーム・読書・筋肉トレーニング・寝る・自粛していない・その他の中から複数選択)
最も多かったのは、“寝る” (68%)と答えた人です。適切な睡眠は生活の質を向上させますが、過度な睡眠は逆に体と脳が疲れてさせてしまいますので、適度な睡眠を心掛けましょう。
全体の33.7%が“筋肉トレーニング”を選択していました。外出をしなくなると体を動かす機会が減ってしまい、それに加えて気分も沈んでしまいがちです。なので、室内でもできる筋トレ・ヨガ・フィットネスで適度に体を動かすと運動不足解消だけでなく、気分転換にもなりとても良い時間の使い方だと思います。
家の中での遊びと言えば“ゲーム”(65%)。最近、私たちが小さいころに遊んでいたゲームの最新版が登場するなど、現在ゲーム業界は非常に盛り上がっています。そしてみなさん、読書(38%)や勉強(47%)で、知識をつけることも欠かしてはいけません。今後の自分のために、家にいる時間を有効活用して新年度の授業に備えておきましょう。
そのほかにも、動画鑑賞、料理、家事(掃除・洗濯など)、SNS、ジグソーパズル、電話などで友達と通話・家の中で歌うなど、みなさん工夫して充実した日々を送っているようです。その中でも私が一番印象に残ったのが、外出自粛時間を「マスクをつくるなど趣味の時間にしています」という回答です。今やどこへ行ってもマスクが手に入らないので、このご時世ならではの素敵な過ごし方だと思いました。
[外出の主な理由は何ですか]
最も多かった回答は、「生活必需品の買い出し」でした。このことからも、皆さんが極力家から出ていないことがわかります。生きていくために、この外出は欠かすことはできません。また、外出しないで常に家にいると気分が沈んでしまうためか、散歩やランニングをしたりして気分転換のために外に出ている方も多くみられました。
[3つの密(密閉・密集・密接)を避けるために何をしていますか]
皆さんの回答は、「一切外に出ない」と「外には出るが、人との接触を極力避ける」の大きく2つに分けることができました。
人との接触を避けるための具体策としては、電車などの公共機関をなるべく使わず代わりに車やバイク、自転車、徒歩を利用するというものがありました。外出を自粛しているとどうしても体動かす機会が無くなってしまうので、特に自転車や徒歩は運動になるので良案だと思います。また、どうしても人の多いところに行かなければいけない時は“人の多い時間帯を避ける“などの回答もありました。友達との交流は、ラインのテレビ電話などを駆使し、工夫して楽しんでいる人もいるようです。
この結果から、薬学生の新型コロナウイルスに対する危機管理意識の高さを改めて実感することができました。少なくとも薬剤師や研究者の卵である多くの薬学生は、未来に恥じない行動をしていると言えるでしょう。若者の代表である学生のみなさんがこのような対策を堅実に実施していることは、特に同じ世代の人々に知っていただきたいです。
~最後に~
最後になりますが、この記事がみなさんの目に届いたのは、日本薬学会会頭の高倉喜信先生と立命館大学の宇高節子先生のお力添えを頂けたからです。誠にありがとうございました。このコラムの執筆にご協力いただきました、先生方、スタッフの皆さん並びにアンケートを記入してくださった学生のみなさん、重ねて御礼申し上げます。
この記事がより多くの若者の目に届き、一日でも早くこの状況が収束することを心から願っています。
2020年外務統括理事 小林幸恵