#33「世界予防接種週間:新型コロナワクチン、受ける前に知りたいこと<前編>」

4月24日から4月30日はWHOが定める世界予防接種週間(World Immunization Week)です。2021年のテーマは「Vaccines bring us closer」。ワクチン接種の重要性を改めて世界中に認識してもらうことが目標となっています。

現在、世界中でCOVID-19のワクチン接種が進んでいます。

日本では一部地域での医療従事者や高齢者等の接種が開始されています。2021年4月27日時点での国内の接種完了率は0.7%とごくわずかですが、今後は増えていく計画です。ファイザー社のワクチンは、連休明けから毎週約1000万回分ずつ日本に供給されます。

コラム前編では、現在日本で供給されているファイザー製新型コロナウイルスワクチンの概要についてお伝えしたいと思います。接種前に少しでも知識を深めてみませんか?

ファイザー新型コロナウイルスワクチン(コミナティ)について

現在日本で主に接種が進んでいるのは、ファイザー社とビオンテック社が共同で開発した「コミナティ」という名前のワクチンです。このワクチンがメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンという種類であることは多くの方が聞いたことがあるのではないでしょうか。

mRNAワクチンは講義で学ぶ生ワクチンや不活化ワクチンとは異なる種類です。これまでHIV感染症や一部のがんワクチンとして臨床試験が行われてきましたが、実用化されるのは今回が初めてとなります。

生ワクチン 不活化ワクチン mRNAワクチン
BCG、MR、水痘など Hib、インフルエンザなど COVID-19

 

 

では、mRNAワクチンはどのような作用機序を持つのでしょうか。

以下は新型コロナウイルスの電子顕微鏡写真です。

ウイルス表面に見られる突起のことを「スパイクタンパク質」と呼びます。この形がまるで王冠のように見えることから、ギリシア語の王冠を意味する「コロナ」ウイルスと名づけられました。mRNAワクチンでは、このスパイクタンパク質を作るもとになる情報の一部を注射します。ヒトの体の中で情報をもとにウイルスのタンパク質の一部が作られ、それに対する抗体(異物を排除するために体内で作られるタンパク質のこと)ができることでウイルスに対する免疫ができます。

なぜ「3週間」の間隔を空けて2回接種しなければいけないのか?

ファイザー製コロナワクチンは2回接種が必要です。そして、日本では1回目と2回目の接種間隔は3週間空けることが必須となっています。なぜ3週間なのでしょうか?
ファイザー製ワクチンの有効性(発症予防効果)は95.0%と公表されています。このデータの根拠となる治験の93%が1回目と2回目の接種間隔が19~23日であることから、ワクチンの有効性をできる限り確保するために3週間で接種スケジュールを組んでいるというのが理由の一つです。ただしワクチン供給の都合上、間隔を6週間程度まで延ばすなどしている国もあります。

なぜ筋肉注射なのか?

ファイザー製ワクチンの接種は三角筋内筋肉注射で行われます。現在の日本ではあまり馴染みのない方法ですが、諸外国ではほとんどのワクチンが筋肉注射で行われています。

日本ではインフルエンザワクチン等でよく行われる皮下注射(subcutaneous injection)は、皮下脂肪があるところに斜め45度から注射します。一般には吸収がゆっくりで、効果が長く続きます。一方で、筋肉注射(intramuscular injection)は、皮膚や皮下脂肪のさらに奥にある筋肉に注射を垂直に注射します。皮下注射より吸収が速く、皮下注射では痛みなどが強い薬の時にこの注射が行われます。

mRNAワクチンが接種されると、体内では筋肉細胞や樹状細胞といった免疫担当細胞の中でタンパク質が作られ、さらにその一部がリンパ球に提示されて免疫応答が起こります。筋肉の中は皮下よりも血流が豊富で免疫細胞も多く分布するため、より免疫反応が起きやすくなります。さらに、「mRNAは壊れやすい」という話をメディア等で聞いたことはありませんか。先ほど述べたように皮下注射は一般的に吸収がゆっくりであるため、より早い筋肉注射が向いているとも考えられます。

壊れやすいはずのmRNAがどうして免疫担当細胞まで届くの?

mRNAは、人体や環境中のRNA分解酵素で簡単に破壊されます。ワクチンが慎重に輸送されているのもそのためです。ただしワクチン化においては、構造の改変・最適化をしたのち、分解を防ぐために脂質でできた脂質ナノ粒子(LNP)で包んでカプセル化しています。また、このLNPによって、人の細胞内にmRNAが取り込まれやすくなっています。逆に言えば、mRNAワクチンを接種したとしてもその情報が長期に残ることはないと言えます。

いつか接種することになるかもしれない新型コロナワクチン。タイムリーな話題である分、現在様々な意見が聞こえてくるかと思います。そして20年、30年後といった長期的な目線で見たコロナワクチンの副反応等は世界中の誰にもわかりません。私たち薬学生が医療系学生としてまず行いたいことは、信頼できる情報を集めて科学的な目線で考えていくことではないでしょうか。

最後に、今この時もパンデミックの収束に尽力してくださっている製薬会社や医療従事者の方々に改めて心から感謝の意を表したいと思います。

(2021年度 コラム担当スタッフ)

参考文献
COVID-19ワクチンに関する提言(第1版) (kansensho.or.jp)
新型コロナワクチンについて|国立国際医療研究センター病院 (ncgm.go.jp)
新型コロナウイルス感染症に係る臨時の予防接種実施要領 000744274.pdf (mhlw.go.jp)
新型コロナワクチンはなぜ筋肉注射なのか?(紙谷聡) – 個人 – Yahoo!ニュース
新型コロナ: ファイザー製ワクチンの間隔、3週間を推奨 欧州医薬品庁: 日本経済新聞 (nikkei.com)
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