#39「世界糖尿病デー」②~糖尿病の種類~

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11月14日は…世界糖尿病デーです。

世界糖尿病デーとは、世界に拡がる糖尿病の脅威に対応するために、1991年にIDF(国際糖尿病連合)とWHO(世界保健機関)が制定し、2006年12月20日に国連により公式に認定された疾患啓発の日です。
今では、世界160か国から10億人が参加する、世界でも有数な疾患啓発の日であり、この日を中心に全世界で実施される糖尿病啓発キャンペーンは、糖尿病の予防や治療継続の重要性について市民に周知する重要な機会です。(InstagramなどのSNSで#WWDと検索してみてください。本当に沢山の方がこの啓発キャンペーンに参加しているのがわかります!!)

Ⅰ型糖尿病とⅡ型糖尿病の違い

さて、今や世界の成人人口のおよそ9.3%となる4億6300万人が抱える病気となっている糖尿病。糖尿病と聞いて皆さんが連想する言葉はきっと、「生活習慣病」という言葉ではないでしょうか。

確かに、生活習慣が原因で糖尿病になってしまう方もいるのは事実です。(糖尿病になってしまったのは生活習慣がわるかったからだと決めつけないで欲しいです!) というのも糖尿病は、糖尿病になる原因別に大きく4種類に分けることができるからです。

4種類とは、A:Ⅰ型糖尿病、B:Ⅱ型糖尿病、C:その他特定の機序・疾患による糖尿病、D:妊娠糖尿病、です。

それでは、一つ一つ紹介していきます!

◎A:Ⅰ型糖尿病

Ⅰ型糖尿病の原因は大きく分けて2つあります。自己免疫性タイプと特発性タイプの2種類です。

まず一つ目の自己免疫性のタイプとは、自己免疫反応の異常やウイルス感染により、膵臓のβ細胞(血糖値を低下させるのに欠かせないインスリンを分泌する重要な細胞)を自分で攻撃してしまい、インスリンを出す機能を壊してしまうタイプです。

二つ目の特発性タイプは残念ながら、名前の通り原因不明で特発的に起こってしまいます。

いずれのタイプも患者さん自身の膵臓から、自分でインスリンを出す力がなくなってしまうため、治療にインスリン療法が欠かせません。

Ⅰ型糖尿病は10〜20代の若い人に突然発病する場合が多いという特徴がありますが、高齢者でもⅠ型糖尿病として発症することもあります。
また、日本では1年間に10万人中約1.5〜2.5人ほどの人がⅠ型糖尿病を発症すると言われており、これはⅡ型糖尿病に比べて発症率が非常に低いです。
そのため、糖尿病=Ⅱ型(生活習慣が原因で起こる)と思われがちです。それでも、若くして糖尿病に苦しんでいる方はたくさんいることを忘れないでください。

糖尿病をきちんと理解して向き合っていくために、Ⅰ型糖尿病についても知っておきましょう。

〇A*:緩徐進行Ⅰ型糖尿病

Ⅰ型糖尿病の中には、糖尿病を発症してすぐは食事療法と運動療法で血糖コントロールでき、徐々にⅠ型糖尿病の状態になっていくタイプの糖尿病があります。これを緩徐進行Ⅰ型糖尿病(SPIDDM)と呼ばれています。
一見、Ⅱ型糖尿病のような状態から始まるため、誤ってⅡ型糖尿病と診断されることがあります。
緩徐進行Ⅰ型糖尿病の患者さんは、膵臓のインスリン分泌の状況に合わせて、インスリン療法を始めます。

〇A**:劇症Ⅰ型糖尿病

最初に血糖値が高い状態(糖尿病症状)が確認されてから、数日で状態が急激に悪化する患者さんがいますが、このようなタイプの糖尿病を劇症Ⅰ型糖尿病と呼びます。

劇症Ⅰ型糖尿病を発症する患者さんの90%以上が20歳以上である、という特徴があります。また、約70%の患者さんで直前に風邪や発熱のような症状がある、膵臓の自己免疫抗体は見られない、などがあります。さらに、妊娠を機に発症したⅠ型糖尿病のほとんどが劇症Ⅰ型糖尿病である、という特徴もあります。

急激に症状が悪化するタイプのものは大変危険です。自分の症状を見極めて、早めの対応を心がけましょう。

〇A***:急性発症I型糖尿病

最初に血糖値が高い状態(糖尿病症状)が確認されてから数か月でインスリン依存状態になる患者さんがいますが、このようなタイプの糖尿病を急性発症I型糖尿病と呼びます。I型糖尿病で最も頻度の高い典型的なタイプであり、血液検査で自己抗体を認めることが多いです。
治療方法は、I型糖尿病なのでインスリン療法です。患者さんの中には、発症した後に一時的に残っている自分のインスリンの効果が改善するハネムーン期がある方もいますが、その後は再びインスリン治療が必要となります。

ハネムーン期になると一見治ったように見えるかもしれませんが、糖尿病は一度発症してしまうと治すことのできない疾患です。

治療は処方された通りに自分で判断はせず、怠らないようにしましょう。

◎B:Ⅱ型糖尿病

日本の糖尿病患者の約95%がⅡ型糖尿病です。このⅡ型糖尿病になる要因には、遺伝的要因と環境的要因があります。まず遺伝的要因とは、両親や親戚などの血縁者で糖尿病を持っている人がいると、糖尿病を発症する可能性が高くなる、ということです。

次に環境的要因とは、食べ過ぎ、お酒の飲みすぎ、喫煙、運動不足、ストレス、といったあなた自身の生活習慣のことを指します。このように、Ⅱ型糖尿病は生活習慣も一つの要素であることから「生活習慣病」と呼ばれています。これらの要因が、複数組み合わされて糖尿病になると考えられているのがⅡ型糖尿病です。

Ⅱ型糖尿病の治療方法の基本は、食事療法、運動療法ですが、それでも改善しない場合はさらに薬物療法を追加して行います。(つまり、Ⅱ型糖尿病は気を付けていれば防げたかもしれないのに、発症してしまうと膨大なお金がかかることもある病気ってことだよ😢)

Ⅱ型糖尿病でも、膵臓のインスリンを出す力が非常に低い方や、長期間血糖値が高い状態を放置した方、糖尿病の期間が長い方などは、Ⅰ型糖尿病の患者さんと同様にインスリン療法が必要になってきます。ここで注意なのが、糖尿病が悪化したから(糖尿病が悪化しても)インスリン療法が必要(インスリン療法がある)ではなく、患者さん一人一人の状態によってインスリン療法が必要になると考えましょう。
(インスリン療法が最終兵器!という考えはやめよう!!)

◎C:その他の特定の機序、疾患によるもの

その他には、遺伝因子として遺伝子異常が固定されたものと他の疾患、条件に沿うものが出た時に発症する2種類あります。

遺伝子因子として遺伝子異常が固定されたものには、膵臓β細胞機能にかかわる遺伝子異常とインスリン作用の伝達にかかわる遺伝子異常が挙げられます。また、他の疾患、条件には、膵外分泌疾患、内分泌疾患、肝疾患、薬剤や化学物質によるもの、その他遺伝的症候群で糖尿病を伴うことの多いものなどが挙げられます。

◎D:妊娠糖尿病

妊娠糖尿病と聞いても、ピンとくる方は少ないのではないでしょうか。(正直、私も知りませんでした……)しかし、赤ちゃんにとってもお母さんにとっても非常に危険な疾患なのでしっかり理解しておきましょう。

妊娠糖尿病とは、妊娠中にはじめて発見された糖代謝異常のことを言います。妊娠すると、赤ちゃんに十分な栄養を与えようとして血糖値が高くなったり、胎盤からインスリンを効きにくくするホルモンが分泌されたりします。そのため、妊娠中は糖代謝異常を起こしやすいと言われています。
(糖代謝異常:血糖値がやや高めということ。血糖が通常より高い状態とは75gOGTTにおいて、「空腹時血糖値92mg/dl以上、食後1時間血糖値180mg/dl以上、食後2時間血糖値153mg/dl以上」の基準を1点以上満たしている状態)

妊娠糖尿病になると(お母さんが高血糖であると)、おなかの中の赤ちゃんも高血糖になり、様々な合併症が起こり得ます。

・お母さん
妊娠高血圧症候群、羊水量の異常、肩甲難産、網膜症・腎炎およびそれらの悪化

・赤ちゃん
流産、形態異常、巨大児、心臓の肥大、低血糖、多血症、電解質異常、黄疸、胎児死亡

以上のように、お母さんにだけでなく赤ちゃんにも影響する可能性があるため、血糖コントロールをきちんと行うことが大切です。

血糖の厳重な管理が最も大切で、食前100mg/dl未満、食後2時間120mg/dl未満を目標に管理します。妊娠中は運動療法があまり出来ないため、まず食事療法を行います。食事療法では、お母さんと赤ちゃんがともに健全に妊娠を継続でき、食後の高血糖を起こさず、空腹時のケトン体産生を亢進させないよう配慮します。4〜6分割食にしても血糖管理が十分に出来ない場合は、赤ちゃんに悪影響を与えないインスリン注射を用いて管理します。妊娠が進むにつれ、インスリンの使用量が増えますが、ほとんどの場合産後には減量あるいは中止できるので心配しないようにしましょう。

【参考文献】
・わずか10分の「階段昇降」が実践的な運動に 階段なら続けられる | 糖尿病ネットワーク
https://dm-net.co.jp/calendar/2017/026592.php 

2021年度 公衆衛生委員会スタッフ