今回の記事は、前に紹介した糖尿病に使われるお薬の詳細な紹介になります!
これらは「血糖降下薬」と呼ばれ、日本では飲み薬と注射薬が用いられています。
その中から、飲み薬(経口血糖降下薬)についてご紹介します。
飲み薬はその作用から大きく分けて下の3つに分類されます。
①インスリンが分泌されやすくする薬
②インスリンを効きやすくする薬
③糖の吸収や排泄を調整する薬
また加えて、このそれぞれの作用を組み合わせた配合薬もあります。
インスリンが1921年に発見されてから、さまざまな研究が行われ、数多くの薬が開発されてきました。
では、それぞれの薬についてその作用と特徴についてみていきましょう!
①インスリンが分泌されやすくする薬
・スルホニル尿素薬
・速効型インスリン分泌促進薬
・DPP-4阻害薬
・GLP-1 受容体作動薬
があります。
スルホニル尿素薬は血糖降下作用が認められた飲み薬として、第二次世界大戦中に世界で初めて開発されました。
現在では第二世代の
・グリベンクラミド(ダオニールⓇ、オイグルコンⓇ)
・グリクラジド(グリミクロンⓇ)
第三世代
・グリメピリド(アマリールⓇ)
などがあります。
膵臓からのインスリン分泌を促進し、血糖値を下げる作用を持っています。また、低血糖を起こすリスクが他の経口血糖降下薬より高いと言われています。
速効型インスリン分泌促進薬はグリニド薬とも呼ばれており、
・ナテグリニド(ファスティックⓇ、スターシスⓇ)
・ミチグリニドカルシウム水和物(グルファストⓇ)
・レパグリニド(シュアポストⓇ)
があります。
服用後すぐに効き始め、インスリン分泌を促進し、血糖値を下げる効果を持っているため、食事の直前(食事開始前5〜10分以内)に服用します。
DPP-4阻害薬は上の二つの薬に比べて低血糖の症状が出にくい薬とされており、2009年から使用されるようになった比較的新しい薬です。
・シタグリプチンリン酸塩水和物(ジャヌビアⓇ、グラクティブⓇ)
・ビルダグリプチン(エクアⓇ)
・リナグリプチン(トラゼンタⓇ)
などがあります。
DPP-4阻害薬は膵臓にあるインクレチンというホルモンの分解を阻害します。インクレチンはインスリンの分泌を促すとともに、血糖値をあげるホルモンであるグルカゴンの分泌を阻害して、血糖値を下げます。
②インスリンを効きやすくする薬
・ビグアナイド薬
・チアゾリジン薬
があります。
ビグアナイド薬は歴史が大変古く、中世ヨーロッパで使用されていた糖尿病に効く薬草である、フレンチライラックに含まれる「グアジニン」という成分が元となっています。
一時期、「乳酸アシドーシス」と呼ばれる副作用が多く報告されたことから、使用が控えられていましたが、その後、臨床データがあらたに出たことにより再評価を受け、幅広く使用されています。
・ブホルミン塩酸塩(ジベトス®)
・メトホルミン塩酸塩(メトグルコ®、グリコラン®)
があります。
肝臓からの糖の放出を抑制したり、インスリンに対する体の感受性を高めたりする作用を持っています。
チアゾリジン系は2021年現在、日本ではピオグリタゾン塩酸塩(アクトス®)の一種類のみとなっており、多くの製薬会社からジェネリック医薬品が発売されています。
インスリンに対する体の感受性を高め、血糖値を下げます。脂質異常症や肥満の方に対しては効果的に作用すると言われています。
③糖の吸収や排泄を調整する薬
・α-グルコシダーゼ阻害薬
・SGLT2阻害薬
があります。
α-グルコシダーゼ阻害薬は、α-GIともあらわされることもあり、
・アカルボース(グルコバイ®)
・ボグリボース(ベイスン®)
・ミグリトール(セイブル®)
があります。
食後の高血糖を防ぐために、小腸からの糖分の消化・吸収を遅らせる作用を持っており、食事の直前(食事開始の5~10分程度前)に服用します。単独の使用では低血糖を起こしにくく、かつ体重増加もしにくいとされています。
SGLT2阻害薬は、日本では2014年より使用され始めた新しい薬です。数多く発売されていますが、
・イプラグリフロジンL-プロリン(スーグラ®)
・ダパグリフロジンプロピレングリコール水和物(フォシーガ®)
・ルセオグリフロジン水和物(ルセフィ®)
・エンパグリフロジン(ジャディアンス®)
などがあります。
本来、人間の体には糖が尿に出ないように再吸収するシステムが備わっています。しかし、このSGLT2阻害薬はその再吸収のシステムを阻害し、余分な糖を尿中に排泄する作用を持っています。糖が尿中に排泄されるため、脱水、尿路感染症や性器感染症に注意が必要になってきます。
数多くの経口糖尿病治療薬をご紹介しましたが、年齢や他の病気、生活習慣などによって、効果はもちろん副作用の出やすさも変わってきます。
糖尿病は今や5〜6人に1人が罹患、もしくは予備軍とされています。
先の記事でもあったように、糖尿病は特に、合併症が恐ろしい病気でもあります。本コラムを機に、これらの薬を使用しなくてもいいよう、若いうちから食生活や運動習慣に気を付けた生活を心掛けていただければ幸いです。
【参考文献】
・血糖値を下げる飲み薬 | 糖尿病情報センター
http://dmic.ncgm.go.jp/general/about-dm/100/020/02.html
・糖尿病の薬学管理必携 | じほう
https://www.jiho.co.jp/Portals/0/ec/product/ebooks/book/49992/49992.pdf
・インスリン発見100周年 | ノボ ノルディスク ファーマ株式会社
https://www.novonordisk.co.jp/about/insulin-100-years.html
2021年度 公衆衛生委員会スタッフ